アンティークピアノ

2026/05/07
- カテゴリ:社長のヒトコト
- 書いた人:由良 俊也(代表取締役)
― おかえり ―その一言を添えた老婦人の、思いがけず白くしなやかな指先が、鍵盤の上で踊った。
私の目にはまるで銀幕に映し出された古い映画のラストシーンのように映った。
この日、改修工事を終えた古民家の引渡しがあった。
建屋の築年数はおよそ百年を超えようかというものだった。
いくつもの年月を数えるうちに、幾度かの増改築を積み重ねた家だ。
今回の改修工事では、光や風の届かぬ場所に再び活気を取り戻そうというのが、設計の骨子となった。
そして清潔で安全で扱いやすい水回りとダイニングキッチンに、思い切ってリニューアルすること。
さらには蔵の内部は、少し日常生活とは隔てた、ちょっと楽しみな空間に仕上げること。
蔵の主役はグランドピアノに張ってもらう計画だ。
やがて家人に訪れる人生の間暇を、心豊かに暮らしてもらえれば…と。
願わくば好きだった映画や小説や、とっておきの楽曲などを、再び楽しむこと。
これまでとはまた違った風合に感じ取れることを確かめてもらえたら、どんなに幸せなことだろうかと。
再びピアノを迎えてそんなことを考えた。
リノベーションにはそういった矜持に背中を押されことがあるんですよね。
R55。 窓辺に横たわる風情を感じながら








