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ALWAYS

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今日の下見は築六十五年の住宅。雨が降ると玄関に染み込んでくる、とのことだった。

土壁は痩せ、柱の根元は虚ろだったが、とはいえなかなか立派な普請だ。
昭和三十年代半ばに夫婦で苦労して建てたのだと、依頼主のご婦人は目を細めていた。

昭和30年半ばといえば東京タワーと同年代だ。
神武景気を経て、巷間誰もが夢に向かって邁進した時代だった。

あの頃はねえ……、夫婦で事業を営んでおり、毎日二つ折りになるまで働いてたのだと婦人は屈託なく笑う。
まるで、ALWAYS三丁目の夕日みたいだと、私も空想を巡らせながら聞いていた。

どこか遠い夢のような、まるで映画のような物語だ。けれどもそれが、私が生まれるほんの五年ほど前だと思うと、笑えなくなった。私は未来に何を遺すだろう?

ALWAYS : いつも、いつもの、通常は。
訳せばこうだが、さらには「いつまでも」という意味もある。

昔、くれないに染まる夕空に溺れた夏の日の思い出。
夢も夕日も差し伸べたその手で掴めそうだった。
「いつまでも」と願って仰いだ夕日は、今も本当は変わらないはずなのだが…。
 

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