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秋が染みてくる

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秋になって(と、言ってしまお)最初の地鎮祭だった。
 
小糠雨降る市島町の田園では、我さきにと稲刈りが始まっていた。
きはだ色の市松模様の風呂敷を広げたみたいに、颯爽とした風景が西の堤防へ伸びていく。
 
神事が終わって、土いじりに興じる小さな兄弟に目を細めながら、
 
「誰よりも妻が一番楽しみにしてるんですよね」
 
施主は噛み締めるようにそう言った。
私も優しい言葉の韻律に頬を緩めて頷いた。
 
ふと見上げると、柿に微かに赤味が差していた。
待ちかねていた秋の色に、やっと出会えた気がする。
 
刈穂の香ばしさを含んだ風が吹いて、遠慮がちな秋虫の、囁くような鳴き声が始まった。
丹波に秋が染みてくる。
 
 

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