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約束

Staff

35時間。岐阜から帰省した次男が実家で過ごした時間だ。
接客業であるため、長い休暇は取りづらいのはよく分かる。
けれども、もっとゆっくりできないかと言いたくもなる。

初日は23時の帰宅だった。
静かになったリビングで、妻と二人で次男を迎えた。

どうや?
久しぶりに顔を合わせる息子にオヤジが掛ける言葉は決まっているのだろう。

仕事は楽しいか
飯はちゃんと食ってるか
彼女はできたか

その答えは、真夜中の食卓をほんのり明るく照らすものだった(笑)

明けて二日目の朝。次男が待ちに待った甥と姪との再会だった。
朝から子どもたちの弾けるような声が溢れ、次男は小さな体を抱きかかえながら相好を崩した。
夜は焼肉とダッチオーブン。長男夫婦も交えて、賑やかな山賊たちの宴のように華やいだ。

三日目の朝に、次男は青いコンパクトカーで帰路に就いた。
朝の丹波の圃場では、稲穂の先に雫が付き始めている。
私は一仕事して、手を置いた。
もう今頃は中山道に入っただろうか。

東の空のイワシ雲を見上げて次男の無事を祈り、
11月になったら岐阜で会う約束を胸の奥にしまい込んだ。
 

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