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数寄屋門

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雲の様子を窺うように篠山で古民家改修工事が始まった。
厳かな神事のあと、施主との雑談の中で25年前の現場(実はお隣さんだった)が話題になった。
それはまだ私がこの仕事を始めて間もない頃、当時の上司に「やれ!」と言われれば何でもやった頃の、茅葺屋根の吹き替え工事というものだった。
屋根とはいっても瓦のように長持ちしないのが茅葺だ。
25年という歳月は容赦なく屋根を傷めていて、曇り空のせいか数寄屋門はひどく疲れた老人のように見えた。
私は思いつく言葉もなく、ただ黙って見つめていたが、やがて・・・
「土埃で真っ黒になりましたよね」としみじみ語りかけたのは、当時一緒に仕事した茅葺の職人さんだった。 
もうとっくにこの世にいない人だけど、悲しい思い出ではなく、あの頃もまた良かったなという感慨がつい言葉になって出てきたのだった。
 
 

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