古建具のはなし

2026/05/30
- カテゴリ:社長のヒトコト
- 書いた人:由良 俊也(代表取締役)


今日は建具の話をしようと思う。
リノベーション、特に古民家に類する旧住宅では、木製建具に施されたその精緻な技巧に眼を見張るものが多い。
【一枚目の写真】
左側。細目板筬格子戸(ほそめいたおさこうしど)。
筬格子戸とは、格子戸と障子を組み合わせた特殊な建具のことで、玄関土間の境の間仕切りに多く用いられた。
夏場は障子を外して通風を確保したそうで、意匠性と機能性を兼ね備えた、優れた建具なのだ。
右側は板戸(いたど)。
中段に帯状の桟が入っているものは帯戸と呼ばれた。こちらは玄関と客間を然と仕切る目的で用いられたものだ。
【二枚目の写真】
さて、次は玄関の引戸だ。
大戸(おおど)という。
大きく開放する時は大戸本体を引く。小さく開放する時にはくぐり戸によって一部だけ開けることができる。
写真のものは障子くぐり戸で、小体な障子でありながら、南側からの強い陽射しの入り込みを和紙がうまい具合に拡散していて、茫洋とした柔らかな光に変えている。
そのおかげで小さな開口ながら、光が土間を満たしてくれている。
ここに光と影の調和、陰影礼賛の美意識が成立するのだね。
…なんて、これはかつて短い時間だったけど、木製建具の薫陶を授けてくださった方の受け売りなのだ。
古い建築雑誌を読んでいて、ふと木製建具の特集記事で、氏の名前を見止めた。
「文:松本昌義」と。
先年、鬼籍に入られたのだが、今でもありし日のやさしい笑い方を私は忘れられないでいる。
古い建具を見ると思い出してしまうのだ。
日本酒と苦い珈琲と煙草が無類の好物だったことも。








