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築80年の古民家リノベ 桜の章

Staff


午後五時。
氷上町古民家リノベーションの現場では、夕まだきの柔らかな西陽が差していてた。

この季節、この時間の、まるで空を焦がしながら山際にぽとりと溶けていく夕陽。
その橙色、あるいは赤銅色の光線は、命を温めてくれそうな穏やかさがいいですね。


処分するためにビニールの紐で固く縛られて色を失くした古本でさえ、柔らかなセピアの色温度を取り戻す。
色どころか、時間さえなくしてしまった柱時計もこの時ばかりは眠りから覚めて、大あくびするんじゃないかと、私はかすかに空想を巡らせるのだ。

解体を終え、コンクリート工事も大方の目処がたった。

隠れていた栗の木の丸太梁も西陽の反射光を受けていた。
古びた梁はどれも横臥して、ゆるゆると背伸びをしているみたいだ。

私はその和小屋組みの下に立ち、しばらく眺めていた。
さて何年振りなのだろうか。
こうして梁が再び春の穏やかな空気に触れるのは…と考える。

桜の花びらをからげて、夕暮れの風が吹き抜けていった。
庭の灌木が騒ぐ。
古民家に話しかけてみる。
物言わぬ古民家のささやかな息遣いが聴こえまいかと、私はそれとなく耳を傾けてみるのだった。
 

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