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コトスの古民家ばなし その三

Staff

コトスの古民家リノベーション。
古人(いにしえびと)の心意気にふれて、胸を熱くするときがあるんです。
イマドキな性能論やデザインコンシャスな家づくりとはまるで一線を画している。
そして新築にはない敬慕と「もったいない」の精神と。
そんなことも考えながら読んでもらえると嬉しいです。


午後2時
アスファルトの道路に北風が舞い、広葉樹の落ち葉を転がしていた。
栗柄峠、藤坂峠と、私は目的地まで車を走らせた。
今日の現場は丹波篠山。手つかずの里山の原風景が目に優しいのだ。

築百年の農家住宅の改修工事に取り掛かっている。

東西南北の各面ごとにジャッキで浮かせコンクリートの基礎を敷設した。
従前と間取りが変わるところには新しい梁と柱で架構する。
外回りは断熱材とペアガラスのサッシを配して、防寒防暑対策にも抜かりはない。

…けれどもこの家の風合い。
はるか一世紀の星霜を超えて、立ち踏ん張ってきたこの家の意気地を、次の世代まで繋いでいくことが大命題なんだと思う。

しずしずと敬虔な神官のように古材に接する老職の所作が、言わずもがなにそれを物語っている。
何百人。これまでいったいどれほどの職人がこの家に関わってきたんだろうか。
それでも尚、こうして新しい家族を受け入れるという。
もうこれには敬意しかない。
日本の家の底知れぬ力を見た気がして、胸が熱く焦げそうになった。


 

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