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梅雨の幕間のお引き渡し

Staff

氷上町でリノベーション宅のお引き渡しだった。

アイランドキッチンが鎮座するダイニングと、大きな掃き出し戸によって開放感がご機嫌なリビング。
小上がりをつけた畳コーナーに対峙する薪ストーブは、寒い冬には暖房はもとより、薪ストーブ料理や湯沸かしなど、その炎で八面六臂の活躍を見せるだろうね。

既存の古びた四寸柱は露わしとしたが、貫穴やほぞ穴など往時の大工の仕事の跡が刻まれていた。
まるで武道で勝負が決した後の「残心」みたいだと身構えてしまいそうになる。
埋木によってモザイクのような、あるいはパッチワークのような補修を、施主から見れば「可愛い♪」と好評なのにはすこぶる安堵したのだった。
これからゆっくり味わってくださいと。

青田風がいかにも心地よさげにカーテンを揺らしていた。
フローリングに葉影を描く太陽も紛れもない夏の日の引渡しだった。

やがて虫の声を聴き、雪月花を愛でる暮らしが訪れますように。
私は祈るように辞去するのだ。
「これからもよろしくお願いします」の言葉を部屋の片隅に残しておく。
 

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