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ホタルで一杯

Staff

先日は個人宅を借りて飲み会だった。
料理も飲み物も持ち寄ること、それだけが唯一のルールだった。


 メンバーは皆、還暦前の同窓だ。話題には事欠かない。
いささかの瑕瑾も汚点もない、まるで学校歌のように潔白な人生なんて滅多にあるものではない。
誰しも思い出を一言語れば、それは言葉の尻から悲喜こもごもの短編小説になるのだ。


 ……家主の発案で蛍を求めて外に出た。
夜空には雲に紛れておぼろな月が半身を晒して浮かんでいた。

 ひとつふたつ、金色の灯火が風に吹かれて漂っている。
 蛍の語源は「星垂る」なんだとか。
もしそれが本当で、この風景が永遠のものなら、どんなに気持ちも楽だろうかと思う。


 夜風に私は逡巡する。
生きる意味を探すのに少し疲れて、人は生きるための居場所に辿り着くのだ。
 
 こんな夜ならたまにはいいよねと、それがお開きの合図となって帰路についた。
すっかり更けた夜空では半月が冴え冴えとして、物知り顔で見送ってくれた。

 

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