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言霊

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菩提寺の方丈が亡くなった。
入山されて四十五年余。
山形のなまりが柔和な物腰に輪をかけていて、秋の夕暮れのような穏やかな人だった。

今年、私は寺の役員を受けており、努めてお茶を濁さぬように、葬送のお手伝いをさせてもらった。

午後三時半。
お骨上げから戻った家人らが
ひと気の消えた本堂にやれやれと腰を下ろした。
ここまで気丈に振舞ってこられた奥方の小さな背中がいっそう小さく見えた。

「お父さん、やっと帰って来れたね」

白布の箱を大事に抱えながら、心根の深いところからため息に混じって漏れた言霊だった。
もしも慈愛というものを素直な気持ちでくるんだら…、こんな言葉になるんだろうか。
これ以上でもこれ以下でもない。
水晶の単結晶みたいな優しい響きがあった。

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