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疫病神と呑む(^^)

Staff

学生時代、四年間を寮の隣人として過ごした友人がある。
長くホテルマンとして働いてきたが、四年ほど前に突然脱サラして、お袋さんの面倒と、居酒屋を開くために、故郷の福井に帰ってきた。
 
彼とは三十年近くのご無沙汰だったが、帰郷を機に、毎年この時期に会うのが恒例になった。
今年は山中、片山津、芦原と、温泉梯子の旅を彼が都合してくれた。
 
この友人の話をしておく。
膝を抱え、背中を丸めたタバコの吸い方が、やけに貧相だったこと。
故郷の福井県の自慢話がやたらと執拗だったことが、殆ど彼の印象だった。
 
ホテルマンのスタートは広島からだった。
その後、おそらく上手く職場に馴染めないまま、異動を繰り返し、やがて転職し、山口、北九州市、そして遂に、鹿児島の霧島でホテルマンはピリオドを打った。
 
人生において、出世コースや結婚生活の幾つもの端境期で、ことごとく歯車が欠けたみたいに故障したと、まるで厄病神に取り憑かれたようなもんだと、薄笑いを浮かべて彼は言う。
そんな時、私は彼の非をそれとなく唱えることもある。
ところが近頃の彼は、人生の隘路を厄病神と肩を組みながらそぞろ歩き、楽しげに笑ってるように見えてきた。
 
私は思う。
それなら今度はそいつも連れてこいよと。
その厄病神とやらと、三人で膝を割って話そうぜと。
ただ、ひと言断っておくが、友人は悪い奴じゃないんだ。ちょっと不器用で、皮肉屋で、正直が過ぎるだけなのだ。
今の境遇と、彼の人となりは、どうにも平仄が合っていない気がするのだ。
 
だからさ。やがていつかは、美味い料理と、温かな風呂と、柔らかい布団を回してやってくれよと。
そんな約束を厄病神と交わしておきたいのだよ(^^)

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