STORY2 平屋リノベで、暮らしにゆとりを。
丹波で人生のリ・スタート
「やったぶんだけ返ってくる。そんな仕事がしたかったんです」と話すHさん夫妻は、約10年前に丹波へ移住し、農業をはじめた。ご主人は大阪、奥さまは神戸の生まれ。2人は大阪の照明器具メーカーで働いていた。
「そもそもはセカウンドハウスのつもりで丹波、淡路島、京都の綾部市など、自然豊かなエリアで家を探していました。ところが、いろいろと見て回るうちに『こんな場所に暮らして2人で農業をやっていくのもいいな』と思うようになったんです」
やがて、丹波に築30年ほどの一軒家を見つけた。高台に建つその家は、見晴らしがよく、隣近所ともほどよい距離があり、人生のリ・スタートにぴったりだった。
畑でトマトを育てながら、少しずつ丹波の暮らしに馴染んでいった2人。ところが、次第に暮らしにくさを感じるようになったとか。それは、家の構造からくるものだった。
奥さまが感じていたのは、日々の暮らしの不便。「田舎暮らしを体験したいと友人たちが大勢で泊まりにくるようになったんですが、とにかく収納が少なくて布団をしまう場所もありませんでした。それから、湿気も悩みの種。クローゼットの服がすぐにカビてしまうほどでした」
一方、ご主人を煩わせていたのは作業場の位置。「別棟の倉庫を作業場として使っていたんですが、自宅と作業場のほんのちょっとの距離が厄介で、どうにも仕事がはかどらないことがありました」
移住して9年経ったとき、夫妻はとうとう建て替えを決意。①地元密着で、②木を使ったナチュラルなデザインが得意で、③型にはまらない自由な発想の家づくりができる、を条件に工務店を探し、KOTOSを選んだ。
2人の理想をぎゅっと詰め込んで
2人の話を聞いたKOTOSは、家の状態や費用面などあらゆる角度から検討し、建て替えではなくリノベーションを提案した。プランには、2人の理想がぎゅっと詰まっていた。
リビングダイニングは、勾配天井と大きな開口部で開放感いっぱい。リビング脇に設けた小上がりの畳コーナーは、普段はリビングの一部に、お客さまがくれば客間になる。玄関収納、ウォークインクローゼット、押入れなど、収納力も抜群。また、勝手口から直接つながるところに作業場と加工場を配置。冬場に備え、作業場には薪ストーブを設置した。
「設計図を広げて『気になること、何でもおっしゃってください』と言ってくれたんです。それで、リビングにロフトがほしいとか、階段下のスペースも収納にしたいとか、ルーターを置く場所がほしいとか、たくさんリクエストしました」
中でも2人がこだわったのは照明だ。すべて自分たちで選び、リビングの天井裏の間接照明は、納得がいくまで位置調整を繰り返した。
手に入れたのは、心のゆとり
リノベーションしてからというもの、毎日が爽快だと話す夫妻。2人の1日のはじまりはとても早い。朝4時に起きて、5時には畑に出て収穫。朝ごはんを食べたら再び作業場で仕事。昼の休憩を挟み、午後は草刈りをしたり、加工場で瓶詰めをつくったり。やっていることはリノベーション前と同じだが、心持ちはすっかり変わったという。
「以前は常に家のことが何かしら気がかりでしたが、もう何の心配もありません。帰ればすぐにくつろげるし、お客さまが泊まりにきてもノーストレス。これでやっと仕事に打ち込めます。農業をはじめたからには、死ぬまでやるつもりです。でも、新規就農である私たちは、まだまだ毎日が試行錯誤なんです。少しずつ自分たちのやり方を確立し、長く続けるための農業をしていきたいと思っています」
今、夫妻がいちばん好きな時間は、1日の農作業を終えた夜、間接照明のやさしい光の中でリラックスするひとときなのだそう。リノベーションによって2人が手に入れたのは、使い勝手のよさや快適さだけじゃない。その先にある心のゆとりだ。それが、明日の仕事の糧となり、未来の暮らしをつくっていく。