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旧友、再会す

Staff

大学の四年間を同じ下宿屋で過ごした友がいる。
就職して最初の勤務地が広島で、その後北九州、鹿児島と移り住み、
​ようやく故郷の福井に帰ることになった。
ここで九州の郷土料理と焼酎を楽しめる、小体な居酒屋を開いたのは
まだ暑さの残る九月の終わりだった。
近畿地方に木枯らし一号が吹いた日、私は休暇を取って開店のお祝いに覗いてみた。

この歳になって、あとどう頑張っても10年かそこらのサラリーマン生活を捨て、
30数年ぶりの故郷で商売を始めるのは、よくせきの事情や覚悟のものだろう。
苦労話は枚挙にいとまがないが、それよりも彼の思い切りに先ずは祝杯といく。
懐かしい話に乾杯。
お互いの近況に乾杯。
30年ぶりの再会に乾杯だ。
​あとは、そう、これからの人生にも一応乾杯しておこう。

新しい生活が軌道に乗るまでは休まず店を開けるそうだ。
休もうとも、気持ちが休まらないという。そんな彼の心証は痛いほどわかるから
​「体は大事にな」といって店を後にした。

人生 別離足る
​会う喜びは短くて、たちまち別れは訪れるもの。
また会おうぜと約束の言葉に、彼の気概を感じ取った。

 

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